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On Your Mark

作詞・作曲 飛鳥涼

そして僕らは いつもの笑顔と姿で 埃にまみれた服を払った

この手を離せば 音さえたてない 落ちて行くコインは 二度と帰らない

君と僕 並んで 夜明けを追い抜いてみたい 自転車

On Your Mark いつも走り出せば 流行の風邪にやられた
On Your Mark 僕らがそれでも止めないのは
夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから

そして僕らは 心の小さな空き地で 互いに振り落とした 言葉の夕立

答えを出さない それが答えのような 針の消えた時計の 文字を読むような

君と僕 全てを 認めてしまうにはまだ 若すぎる

On Your Mark いつも走り出せば 流行の風邪にやられた
On Your Mark 僕らがこれを無くせないのは
夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため

そして僕らは

 

【モチーフ】夢にむかって
【テーマ】失恋

 

この曲は6分30秒を超えるスケールや生ギターの音色、「On Your Mark=位置について(get,set,go=用意、ドン)」というタイトルや「夢」という歌詞などからヒューマニスティックな印象を受けるし、実際にファンもそうだと思っている。しかし私は異論を提出したい。これは失恋を扱った歌であり、ラブソングであると。
「ASKAの失恋?」という記事を書いた。ASKAのラブソングには失恋ものが多く、「傷つけあった果てに別れ、それを悔やみ続ける」という内容が多いことを指摘し、それは20代における実体験ではないかと提起した。このことは多くの曲を聴いてきたファンなら、共感してもらえると思う。そしてこのOn Your Markもそれに当たると思うのだ。
そのことに思い至ったきっかけは韓国公演である。伝説の韓国公演では最後の曲がこれで、ASKAは泣いてしまい歌えなくなった。それについてASKAは「歌詞と日韓の状況がだぶったため」という趣旨の発言を残している。この発言を第一級の資料として尊重しよう。では日韓とは何か。そのココロは、ケンカばかりして仲が悪い。

実際に歌詞にも書いてある。

 

そして僕らは 心の小さな空き地で 互いに振り落とした 言葉の夕立

 

心の空き地とは、人はそれぞれに見えている世界が異なり、自分の経験則の外にあるものは視界に入ってこない。この現象を心理学でスコトマという。相手の気持ちがわからないというのは、いつも心の空き地の成せる業であって、対立はそこから生まれる。

言葉の夕立という表現からは、とても激しい言い争いが想像される。しかし相手を慮っているので、言葉の夕立というあまりにも美しい詩に昇華しているのである。

恋人と激しくケンカをして別れたという状況が、様々な曲の歌詞に散見されるけれど、この一節はとりわけ美しい。要は口ゲンカなのだけど。

 

On Your Markというフレイズは、ケンカしても「やり直す」というニュアンスが感じられる。いつも走り出せば 流行の風邪にやられたということなので、仕切り直して走り出してみたところで、また伝染病のように風に吹かれてケンカしてしまう。

ちなみに「やり直す」といモチーフは『no no darlin’』の主題にもなっている。

 

失恋という観点から、歌詞を拾ってみよう。

 

そして僕らは いつもの笑顔と姿で 埃にまみれた服を払った

 

いつもの笑顔と姿でというフレイズから、私は写真を連想する。埃にまみれた服を払ったというのは不明だが、そんなポーズの写真が部屋に飾ってあったのだろうか。

 

 

落ちて行くコインは 二度と帰らない

これは別れた最愛の女性を指すであろう。「帰らない」というフレイズは『なぜに君は帰らない』にも使われている。

 

 

答えを出さない それが答えのような 針の消えた時計の 文字を読むような

別れという答えを出さずにずるずると泥沼の関係を続けてしまう。未来という時計の針がまるで見えなくなっている。「時計」というフレイズは『止まった時計』などにも使われている。ASKAの失恋の象徴である。

 

 

君と僕 全てを 認めてしまうにはまだ 若すぎる

恋を始めるのも若気の至り、恋を終わらせるのも若気の至り…  認められない互いの過ち。「色んな人が若すぎるって言ったんだ」というフレイズが『君の好きだった歌』にもある。

 

 

夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため

「僕らと呼び合う」ことが夢、ということだろうか。夢とはかつて果たせなかったもののことである。

 

 

夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから

二人で一緒になるという見果てぬ夢。夢を描くからこそ生きていけるのかもしれない。

 

(2015年12月18日)

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