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Breath of Bless

 

収録曲

 

2014年の事件後、2枚のアルバムと2本のツアーを経て発表された、2020年の意欲作。前2作には「復活の狼煙」的な意味合いも多分にあったと思うが、今作は通常営業の一環と言ってももはや差し支えないだろう。

 

結論から言うと、いい。迷っている人には是非購入を勧めたい。新境地を開拓するかのような快作が登場した。位置付けで言うと『Too many people』『Black&White』に並ぶクオリティであるのは間違いない。つまり2000年代以降では出色の出来栄えと言える。復活以降、新譜のクオリティが高止まりしているね。暗黒の00年代を静観・諦観してきた身からすると、それだけで感動する。

 

(全曲試聴動画)

 

前作『Black&White』は90s J-POPを彷彿とさせるようなポップな一枚だった。ひるがえって今作。私はブルースに近づいたような印象を受けた。

前作よりもさらに興奮度を下げるような落ち着いたメロディ。シャウトの無い落ち着いたボーカル。また、主旋律のリズムを外すボーカルワーク(これを表す専門用語があるんだろうが・・・ 特に『歌になりたい』のサビの感じね)。メッセージ性のある、または内省的な歌詞。いずれもポップスを超越していると感じられた。

 

 

これらのミュージシャンはブルースロックと呼ばれている。この雰囲気に似ていると思う。また、暗いムードの曲が半数近くを占める。このあたりはkicks』をも彷彿とさせる。

ブルースロック風の曲は『憲兵も王様も居ない城』『修羅を行く』『じゃんがじゃんがりん』『青い海になる』。いずれも重量感のある快作である。

 

 

 

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以前に発表されたシングル曲だけでこのアルバムを判断しないほうが良い。私も正直あのシングル群はそんなに好きではなかった。むしろ未発表のアルバム曲たちが非常に良いのである。

私が好きなのは『忘れ物はあったかい』『百花繚乱』『消えても忘れられても』『青い海になる』『星は何でも知っている』(この曲はシングルで出ていたことを認識していなかった)

 

『消えても忘れられても』の哀愁ただよう感じは好きだね。私は『Black&White』でも『僕であるために』がすごい好きなのだが、似たものを感じた。(しかし『僕であるために』を賞賛している人を見たことがないな・・・ あれはいいよ)

 

余談だが『未来の人よ』は前作『Black&White』における『今がいちばんいい』のようなもので、あのナレーションはご愛嬌か。ブログのコメント欄に「配信のアルバムではあの語りを取ってください」とガチ嘆願している人がいたのをたまたま見つけてしまった笑

 

 

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また、今回は音がソリッドで斬新だなぁと思いクレジットを見てみると、なんとインスト曲『Breath of Bless』以外のすべての曲の編曲者ASKAになっている。これはかつてない試みで、まさに新境地と言える。

生演奏をグッと減らしていると思われ、打ち込み音が目立つ。『百花繚乱』や『虹の花』はエロクトロニカと言ってもいいくらいのピコピコ感が認められるだろう。音のふしぶしに若干の素人くささが残るものの、過渡期にはそれもアリだ。『Too many people』にもアマチュアっぽさを感じた。しかしそれは取り巻く状況と長い歴史が無化してくれる。メガヒットを飛ばしたトップスターがインディーズに転向するという奇妙な状況のことね笑

アレンジャーを遠ざけたのにはどんな理由があるのかは知れないけれども、悪くはない試みである。まぁでもどうせダークな作風にするのなら松本大先生にお出まし願いたいがね。

 

 

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Too many people』以降アルバムの曲順がライブのセットリストになっているように感じる。今作ではM12でハードな出だしを迎え緊張感を煽っておいて、3曲目でやにわにポップスへ、『どうしたの?』。これは前作における『lonliness』と同じ。ライブでもよくやるけど3曲目で一気にテンションをハードからソフトへ転換するのだ。分かってても掛かってしまう催眠術のようで、お見事な手法でありニンマリしてしまう。

また今作も「大作系」が2曲。『歌になりたい』『We Love Music』。これは15 曲というボリュームの中で真ん中と最終盤に配置されている。これもまたライブの如し。

 

 

ついでに言うと『We Love Music』の前が小品『星は何でも知っている』になっていて、ラストの前は敢えてひっそりとさせてボルテージを上げるやつ。これはアルバム『PRIDE』における『流れ星のゆくえ』を思い出したね。

 

 

そして最後がインスト曲Breath of Bless』。何度も書いてきた通り私はASKAのインストを愛してやまない者である。アルバムのラストがインストってのはなかなか乙だ。どうせなら一曲目もインストでもいいし、全曲がインストでもいい。

 

 

 

ちなみにiTunesで『心に花の咲く方へ』インストverが聴けるので、興味のある方は是非どうぞ。

 

 

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作品を生み出して世の中に発表し、評価を問うという営みは我々が思っている以上に大変なプレッシャーなんだろうね。終章狼狽も詮方無し。この御時世に身の内からエナジーが湧いてくるような素晴らしい芸術に触れられるのは得難いことだ。渾身の一枚を皆で味わいましょう。

 

(2020/04/09)

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