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はじまりはいつも雨、SAY YES

ともに作詞作曲・飛鳥涼

 


歌詞

 


歌詞

 

チャゲアスの歴史を学ぶにあたっては、覚えておかなければいけない年号がみっつある。1979年、91年、97年
79年はデビュー曲『ひとり咲き』をリリースした年だ。福岡の第一経済大学在学中の21歳のこと。ついでに発売日の8月25日まで覚えておくと、ときどき何かの役に立つ。この日にイベントがあったり、アルバムが発売されたりする。
97年は、初めてのASKAソロツアー”ID”が行われた年。シングル『ID』の異様な暗さも特筆に値する。96~97年を境にして作風がロック路線にガラリと変わり、その後99年頃には「ついてこれない人はしょうがない」などと強気な発言も繰り返している。精神面での大きな変化を感じさせた。色々な意味でエポックだったと私は思う。

そして91年。チャゲアスが天下を獲った年である。3月に『はじまりはいつも雨』をリリース、初めてのミリオンセラーを達成。世の中には「忘れられるミリオンセラー」と「記憶に残るミリオンセラー」とがあると感じるけど、この曲は明らかに後者であろう。ちなみに『ラブストーリーは突然に』と被ったので一位は獲っていない。7月に『SAY YES』をリリース、13週間連続一位、280万枚を売りまくる。10月にアルバム『TREE』をリリース。230万枚という当時のアルバム売り上げ新記録を叩き出す。
覚えておくべき年号はみっつと書いたが、中でも最も重要なのがこの91年。チャゲアス=91年くらいに思っておくといいだろう。

 

今回の歌詞分析ではその91年を象徴する二曲を並列して分析してみたい。テーマは「どんな歌詞が天下を獲るのか」。ヒットの要因を探ってみよう。以下、赤字がはじまり、青字がSAY。

 

 

時代
大きいくくりから言うと、二曲ともラブソングだ。いつの世もラブソングは一定の需要があるだろうが、特に90年代初頭の歌ってラブソングばっかりだったような印象がある。つまり時代にマッチしていた。2000年代以降は「自分を認めよう」的な、励まし系が多いような。(最近は80sブームとも言われるが、再びベタなラブソングに回帰していくか?)

 

飛鳥涼ならではの個性
この二曲のラブソングが世の中で際立ったのは、ベタなようでベタではない、「飛鳥涼」の個性が感じられたからではないだろうか。ラブソングをベタに終わらせない、独特の世界観がある。

 

《はじまりはいつも雨》
恋の切なさを”雨”というアイテムによって、一段上に昇華させている。タイトルは「ものごとをはじめるときは、いつも雨に見舞われる」という雨男の歌と読める。ちなみに霊感の強い人は往々にして雨男・女で、私はこの”雨”という設定にASKAの個性を感じたりもしている。
いつも雨に降られるという雨男現象を、美麗なフレイズで飾り立て、恋の切なさまで煽るという高等なレトリックだ。雨とか星とか、ロマンスのオン・パレード。とどめは「作詞作曲・飛鳥涼」。なんだこのキザな名前は、笑。でもこの名前自体にシビれてた少年少女も多かった。

 

《SAY YES》
『101回目のプロポーズ』の主題歌というオーダーを受けて書かれた曲なのだが、プロポーズって言うとふつう、男が女に「結婚してください!」。それがこの曲では「君は確かに僕を愛してる」。主客が逆なわけだ。
このような奇妙な詞が出てくるのは、ASKAの運命観のなせる業ではなかろうか。結婚に運命を感じる人も多いと思うけれど、「君は確かに僕を愛してる」っていうセリフは言い方を変えれば「私たちは運命で結ばれています。君は僕を愛しているはずです」ってニュアンスかなぁと個人的には思っている。
いずれにせよ、この強烈にねじれた詞が唯一無二の個性を放っている。それでいて「暮らさないか」という昭和的な直球プロポーズも。この揺さぶりがすごいわけだ。

 

 

 

自然物
夕焼けとか花とか、自然物を詩にまぶせば、急にロマンチックになる。古来和歌の世界で「花鳥風月」と言われてきた所以だ。特にこの二曲には花鳥風月が強く効いている。

 

君に逢う日は不思議なくらいが多くて
のトンネルくぐるみたいでしあわせになる
君を連れ出すたびにが包んだ
今夜君のこと誘うからを見てた
はじまりはいつも
ふたりをよけて

 

寂しい

の屋根に守られて
を迎えていつまでも暮らさないか

 

意味不明
当サイトで何度も指摘してきたが、ASKAの詞は意味不明だから良い。一聴して意味が取れるような詞は、耳にもスルーされ世の中にもスルーされる。「え、何だって?殴る!?」みたいなフックがあるから、世の中にもフックする。以下に挙げる詞はどれも、立ち止まって熟考しなければ意味が取れないものだ。

 

水のトンネルくぐるみたい
愛じゃ足りない気がしてた
君の名前は優しさくらいよくあるけれど
君の景色を語れるくらい抱きしめあって
愛の部品もそろわないのにひとつになった
星をよけて

 

すべてが君と僕との愛の構えさ
恋人のフレイズになる

愛には愛で感じ合おうよ
硝子ケースに並ばないように
君があふれてる
星の屋根に守られて
恋の手触り消えないように

 

切なさ
「殺人事件にもホロリとくる切なさが含まれていなければ、読者には響かない」。ミステリー作家・内田康夫のエッセイに書いてあった。歌も一緒だろう。たしかに二曲ともにうまくいきそうな、いかなさそうな、恋の切なさを扱っている。

 

僕は上手に君を愛してるかい愛せてるかい
君は本当に僕を愛してるかい愛せてるかい(2番で「本当に」、に変わっているのがミソ)
訳もなく君が消えそうな気持ちになる
失くした恋たちの跡をつけて

 

君に逢いたくて逢えなくて寂しい夜
硝子ケースに並ばないように
恋人の切なさ知った

 

 

 

この二曲はヒットするために作られた曲である。そのような趣旨の発言をASKAは残している。たしかに他の曲のように魂を削るような深みは感じられないものの、技巧は徹底していると感じる。ヒットメイカーASKAの作詞テクニックを確認するには、この二曲は格好の材料だろう。

 

ところで当サイトではこれまで、「語句」ということを言いたいときに一貫して「フレーズ」ではなく「フレイズ」と書いてきた。これはSAY YESでの表記を踏まえてのことだったのだ。これに気がついた人は、果たしていたでしょうか。ミニマルなこだわりでした。

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