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ASKAのルーツを探る

 

2017年3月18日、チャック・ベリーが死んだ。チャック・ベリーとはアメリカのR&Bのレジェンド。60年代にイギリスで生まれたロックはみな、アメリカのブルースを真似たものだ。ストーンズもビートルズもクリームもツェッペリンも皆ブルースのマニアであり、いかにブルースをコピーするかというところからロックの歴史は始まったのだ。そのアメリカのブルース界のキラ星の中でも、もっともレジェンドと言えるのがチャック・ベリー。彼がこの地球上に残した影響は甚大なものと言えるだろう。そのチャック・ベリーがASKAにも影響を与えたというと意外だろうか。

(冒頭に映るギタリストはキース・リチャーズ。キースの自伝『ライフ』はドラッグ話が多く、とても痛快な話題作)

 

1:19からのギターワーク。これをダック・ウォークという。ファンなら分かると思うが、ASKAの得意技(笑い)。 いや、私もチャック・ベリーが基だとは知らなかった。新聞に写真が出ていてビックリしたのだ。

ダック・ウォークはフォロワーがいるので(矢沢永吉とか)、ASKAが受けた影響は間接的なものかもしれない。しかしそれでも、R&Bの系譜にほんの僅かでもASKAが連なっているという事実を、とても興味深く感じた。その他にも、ASKAの音楽は何に影響を受けてできたのか、急激に気になってきたので、考えてみたい。

 

 

作曲


作曲に関して、90年代の絶頂期はデビッドフォスターを真似ていたとASKAは告白している。典拠はGOOD TIMEツアーのパンフレット。デビッド・フォスターを真似ている時が、一番売れたと。その後ロック展開をして変化をしていくわけだが。
デビッド・フォスターとはアメリカのプロデューサー。ステージにも立つが、プロデュース業のほうが伝説的。この曲もフォスターのプロデュース。


(この映像、チャゲアスも出演したモナコのMUSIC AWARDS)

 

フォスターについて私はあまりよく知らないので、こちらのサイトを参照いただきたい。
http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/8873

 

こちらを読んでいたら、〈ブラスロック〉という言葉が出てきた。吹奏楽器を多用するロックのことらしい。それはフォスターがプロデュースしたシカゴのお家芸らしいのだが、ブラスバンドといえばチャゲアスも多用していたではないか。ステージにサックスとかトロンボーンとか配置していたことを思い出す人も多いだろう。アルバムで言えばGUYSやRED HILLもまさしくそれ。全盛期の音楽がそうだから、チャゲアスと言えば吹奏楽器を多用するイメージが強いのだ。チャゲアスにはストリングスも欠かせない。音がぶ厚い。このへんもフォスターの系譜なのかもしれない。


(ちなみにこの動画、私がかねてより主張している「オフィシャルでライブ映像をyoutubeに出せ!」を実践しているもの。シカゴのオフィシャルなんだけど、なんと一時間以上も続くライブ映像。さすがアメリカ人。大ざっぱ)

 

 

本人もよく言うのだが「日本の歌謡曲を聴いて育った」。公言しているところでは筒美京平、坂本九、タイガースなど。これはラジオ番組だが、笑ってしまうくらい昭和歌謡を愛しているのが分かる。

 

こういう日本の大衆文化で素直に育った遍歴があるからこそ、光GENJIを大ヒットに導けたのだろう。

 

これは沢田研二のカバー。完璧に消化し、オリジナル以上へと昇華している。ちなみにこれは私がもっとも愛する映像、WOWOW版IDツアーの本編ラスト。カバー曲で、この圧巻のスケール。天才すぎる。

 

 

高校時代に剣道をやめてギターを始めた時には、井上陽水を練習したという。陽水の嘘のない詩の世界は、ASKAに通じると感じる。臨場感のある切なさ。実体験がにじんでいて、身を切るような歌。「いまだに陽水さんの前だと緊張する」と95年に語っていた。

 

 


あと、学生時代から映画のサントラをよく買っていたという。壮大でドラマティックなASKAメロディの淵源はここにあるのだろう。

 

0:55からの曲がASKAの『C-46』。
そういえば私は『古畑任三郎』と『燃えよドラゴン』、『ロッキー』を中学生のときに買ったことを思い出した。音楽の趣味を広げていこうとするとサントラなんて聴かなくなるんだけど、ピュアな中学生くらいだと案外サントラに手を伸ばすものなのかな?ストーリーとくっついた音楽というのは、強い。SAY YESもそうだ。

 

 

ステージング

ASKAのステージングは世界一だと思うが、これは一体誰の影響を受けたのか?本人の証言はないが、間違いなくポールマッカートニーは影響を与えている。ファンなら見れば分かるだろう。

 

うまく説明できないが、声に魂を乗っける感じや、時々後ろに下がったり、顔を振ったりするリズム。これはASKAそのままだと思う。ASKAはポールに憧れているのは確かで、対談もあるのだが、さすがに緊張している。ビートルズよりも先にウィングス(解散後に活動したポールのバンド)を聴いたとのこと。ちなみにASKAの推薦盤はポールのソロアルバム『TUG OF WAR』。そしてCHAGEはジョン派。


ASKAがポールの娘さんと偶然知り合った逸話は、ファンの間では有名。

 

 

 

作詞

 


詞に関してはハッキリ、本人が証言している。バイロンヴェルレーヌゲーテ谷川俊太郎。典拠は週刊SPA!2017年2/14.21合併号。いずれも文庫で手に入る大御所なので、検証しやすい。

バイロン・・・ASKAの世界観には〈荒野〉と〈兵士〉がよく出てくる。バイロンを紐解いてみると、戦争を詠んだ作品が多い。ここに影響を感じられた。アルバム『黄昏の騎士』に通底するヨーロッパのジプシー的世界観も、バイロンを下敷きにしているのかもしれない。デビュー当時にむさぼるように読んだというから。

ヴェルレーヌ・・・身の回りの情景の一瞬を切り取ったような作品が多い。これはASKAそのままだと思う。一瞬の時間の中に流れる心理を描写するのがASKA節。見つめ合う一瞬の、目に宿る嘘。みたいな(僕はこの瞳で嘘をつく)。

ゲーテ・・・言わずと知れた精神世界の大御所。ルドルフ・シュタイナーは神秘主義的観点からゲーテを研究した。そういう読みが正しい。不遜だが私もシュタイナーになったつもりでASKAの歌詞を分析している。霊的レベルはゲーテの遥か上を行ってると思うけど。

谷川俊太郎・・・直接的影響がもっとも大きい作家。80年代半ばから見られるASKAの抽象的な言い回しは、谷川の影響と断言して間違いない。読んだことがない人は、ぜひ読んでください。そこかしこにASKAを感じることができる。”引き合う孤独の力”なんてフレイズとか(『二十億光年の孤独』)。

 

当サイトで強く指摘し続けている失恋論。ASKAのラブソングは大半が失恋に関係するものであり、ストーリーも決まっている。「傷つけ合った果てに、お互いをこれ以上傷つけないよう、別れた」。このストーリーの歌を数え上げたらキリがない。

そしてこれと似たイメージの曲が、歌謡曲にある。尾崎紀世彦『また逢う日まで』。行間が深い、最高の歌詞に注目してほしい。

 

 

チャゲアスの電光石火ツアーでこの曲をカバーしたこともあるので、たぶんASKAは愛着があるのではないだろうか。何せストーリーが似ている。「互いに傷つき すべてを失くすから」「二人でドアを閉めて」。敢えて、二人の未来と、美しい思い出のために、自分たちの意思で関係を閉じるのである。それは例えば『no doubt』の「僕らはきっとあの恋を閉じ合った 思い出を愛せるように」という歌詞にも通じる。「別れのそのわけは話したくない」という場面も、「本当のことは何も言えないままのお終い(『くぐりぬけて見れば』)」などに見られる。

ただし別れを悔やまないのが『また逢う日まで』、悔やむのがASKAという違いはある。そのために印象はまったく変わる。もちろんパクリなどと言うつもりはひとかけらもなく、詳しくは歌詞分析カテゴリを参照されたい。

テレビでも歌っている。

 

総評

以上、見て来たところでは、意外と洋モノの影響を受けているということ。ASKAがほんとによくいう話で、「アジアっぽい音楽と言われるけど、そんなことはない。全然違う。洋楽に影響を受けてきたし、洋楽的な音楽を作ってる」というやつ。今回改めて検証してみて、ミエじゃなかったんだなぁと分かった(笑い)。曲だけじゃなく、詞もステージも、欧米から学んでいる。歌い方が演歌っぽいと思ってたけど、それすらもポールに似ているということでカタがついてしまう。

私の力量不足で有名どこしか取り上げることができなかったが、ASKAはもっとマニアックなものを取り込んでいると思われる。そのへんを探って行くときっとおもしろいだろう。

 

これはASKAの素養が垣間見える対談。最後に「ミュージシャンがアーティストって呼ばれるのがイヤでね。もう、そう呼ばれること自体がすごくカッコ悪くてね。芸術なんてやってるつもりないから。カッコいいことで、世の中をどれだけ刺激できるかってことしか考えてないのね」と言う。この対談を書籍で読んだ10代当時に、かっこよすぎて天を仰いだ記憶がある。世の中が思う以上に、たぶん10,000倍くらい、ASKAは深いんだって。

 

(2017.3/22)

 

 

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