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ASKA『Too many people』レビュー

収録曲

 

 

結論から。興味を持っている人なら迷わず買い、でいい。主観では少なくとも2000年以降のチャゲアスのアルバムで一番よかった。正確に言うと今までのチャゲアスから進化を見せていて、やや毛色が違うので比較が難しいのだが。とにかく快作なのは確か。

ファンの誰もが感じているようだが、期待を上回る内容なのだ。裏切られるのが怖くて、期待をかけてない人も多かったと思うけれど。

私は今作を聴いてやっと自分自身を認識できた。2000年以降のチャゲアスに期待が持てなかったという趣旨のことを何度か書いてきたけれど、ほんとうは期待を裏切られるのが怖かったんだな。可愛さ余って憎さ百倍というやつだ。このような快作が出てくると、にわかに今後への期待も頭をもたげてきた。そんな自分にビックリ、という感じがする。それくらい「期待」って懐かしい感覚。

 

以前にも書いたが、ASKAメロディが進化を遂げている。華麗な足払いを食らうような、意外な角度で琴線に触れる。メロディだけで切り取ると、全曲悶えるほどに良いと言っても過言ではない。

あと、歌い方も新しい。ASKAと言えば鼻にかける独特のシャウトだったのが、ふつうに喉で吠える男くさいエモーショナルなシャウトがいくつかあった。これも私の琴線の新しい部分に触れた。

 

好きな順に曲を挙げると『Be Free』『Too many people』『東京』『FUKUOKA』

 

・『Be Free』の流麗なメロディはすごい。らせん状にヴォルテージが高まっていくような、抑制の効いた構造の美しさを感じる。歌唱にも余裕があり、とても心地よく聴ける。

・『Too many people』は直球すぎて良い。他の曲の歌詞は「うまいこと言った!ええカッコしたった!」みたいな感じを受けてしまうが、やはり言いたいことを言いたいように言うと、心に響くんだと思った。この怨念ブルース路線は今のASKAにジャストフィット。

・『東京』はサビのメロディに異次元を感じる。声が裏返るのも新しすぎる。今までになかった種類の興奮。

・『FUKUOKA』はYouTubeで聴くのと印象が違って、良かった。YouTubeだと重たく感じたけど、CDだともっと軽く、お洒落なブルースに聴こえた。YouTubeはあくまでも動画ということか。メディアの差を感じた。こういうウィスパーボイスのブルースって、今のASKAの真骨頂なのかもしれない。

 

 

しかし褒めてばかりじゃ信憑性がないので、物足りなかった点も書いておこう。

 

アレンジに難あり
メロディ、歌唱で攻めているのにアレンジが中途半端に感じた。新しいのか古いのかよくわからない音になっている。メロディが最高でも何か物足りない。次回作では思い切ってメンバー変えてほしいと思った。有能な若手を起用すればCHAGEみたいにイッパシのオシャレ感が出るだろう。『TREE』にしても『RED HILL』にしても、当時はあれが最新で流行の音だったわけだろう。そういう類の新鮮さが、なかった。今回初めて思ったのだけど、アレンジひとつでポップスはこうも影響を受けるのか。ある意味非常に参考になった。
そして音が少ない。『リハーサル』『と、いう話さ』は待ちに待ったロック路線なのに、音が薄いように思われた。この2曲はゴリゴリにぶ厚い音にしたら、さらにカッコ良くなったのでは。

まぁこれはないものねだりだけども。コンプライアンスなどと言われる今の状況で、バックスに力を注ぐのは無理なんだろう。シンセサイザーはASKA本人という衝撃。ちなみに協力してくれた福岡のスタジオとはここらしい。歌詞カードのクレジットに実名出てた。

 

ただしこのアレンジの難点はライブではある程度解消されるだろう。CDの何倍も良い演奏をするのがチャゲアス流。素晴らしい感動が生まれることと夢想する。

 

歌詞が未昇華で直情的
歌詞カードを熟読しながら聴くのが、従来の私のチャゲアス鑑賞スタイル。しかし今回はそうはしない。特に難解な表現もないし、中身が重すぎる。身辺の状況が見えすぎて、私には耐えられなかった。未昇華の自己憐憫が重たい。「元気か自分」。こんな直截的なフレイズはASKAらしくないと私は感じる。

ただこのへんは好みでもあり、ASKAの苦悶が見える歌詞で涙するファンもいるわけだ。
まぁこの状況で穢れのない歌詞が書けたら超人だ。人間くさい詞と言えばいいだろうか。アレンジと同じく、ないものねだりである。

 

ただし『Too many people』を聴いて悟ったのだけど、ここまでハッキリと飾り気もなく言いたいことを言われると、一周回って爽やかな印象を受ける。だから私が他の曲に感じる甘さは、ASKAの「ええカッコしい」という安いマインドのなせるワザのような気がする。
やるなら堂々と。泥臭くても、泣き言でもいいじゃないか、と思った。

 

(2017/02/23)

 

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